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Wearing the Music 0p.1
ジャズピアニスト・鞍智彩音 × Em7
「Em7(エミナ)」のジュエリーは、音楽や人の持つ二面性をテーマに生まれています。
今回お話を伺ったのは、ジャズピアニストとして活動する鞍智彩音(くらち あやね)さん。
彼女が奏でる色彩豊かな美しい音の裏側には、表現者としての葛藤と、それを乗り越える強い信念がありました。
アイデンティティを守るために実践していることや、過去の痛みさえも「光」に変えて奏でる、彼女の強さと脆さ。
Em7ディレクターの小林左京が、彼女の音楽人生と、その奥にある信念に迫ります。
鞍智彩音さんの演奏動画をYoutube、Instagramにて順次公開しています。そちらもぜひご覧ください。
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ピアノとの出会い
いきなりですがまずはアイスブレイクも兼ねて、これまでの経歴をざっくり教えていただけますか?
はい。ピアノを始めたきっかけは……正直覚えていないんですけれど、母が国立音楽大学のリトミック専攻卒業で、実家にも母の実家にも父の実家にも、もうどこにでもピアノがある状況で。
ホームビデオを見ると、まだ「ママ」も言えないような状態なのに、膝に乗せてもらってピアノの前にいて、こうやって弾かされている映像が残っていて(笑)
物心つく前から、もう音が生活の中にあったんですね。
そうなんです。
「彩音」っていう名前からもわかると思うんですけど、生まれる前から多分、もう音楽をすることは決まっていたような感じで。
3歳から本格的に個人の先生についたんですけど、外部の先生に師事してからスパルタ教育が始まりました。
すごいですね、3歳で既にスパルタ。
当時は今の時代ほど指導の基準が整っていなかったこともあって、3、4歳から先生に強く叱られたり、厳しい言葉をかけられたりしながら 「前回言ったことできてないでしょ!」って。
トラウマになるようなこともたくさんありましたが、そこから「ピアノから離れる」という選択肢がない幼少期を過ごしました。
小学校はずっと国立音楽大学附属でクラシック科だったんですが、高校1年生で吹奏楽部に入ってサックス専攻に転向したんです。
でも、1年だけやってみて、「自分があまりにもか弱すぎてサックスを持ってるのが疲れる」ようになっちゃって(笑) やっぱりピアノかなと思って戻りました。
サックスも吹かれてたんですね!
そこからジャズへはどういう経緯で?
大学もクラシック専攻だったんですが、大学4年生のときに他の音楽大学のジャズ専攻の先輩に
「楽譜だけ読めても食べていけないよ」って言われたんです。
「これからは即興をやらねば」という意識になってジャズを始めました。
クラシックだと、どうしても教える仕事や伴奏の仕事に限られてしまう部分があって。
ジャズや即興ができるようになってからは、CMレコーディングとか、当日コード譜だけ渡されて「ここに企業の名前の替え歌が入るんでバッキングしてください」みたいな仕事もできるようになって。
今はジャズの仕事が主になっています。
1日のスケジュール
ジャズに転向されてからの生活スタイルについて聞きたいのですが、オンとオフの切り替えってありますか?
それが悩みなんです。
「ない」というか……常にピアノがあるし、1日練習をしないと感覚を戻すのに数日間かかるので
「今日は1日遊び呆けるぞ!」という日がなくて。
一度、それに本当に問題を感じて、疲弊して廃人みたいになった時期があったんです。
周りに「もう○ぬ前に寝な」って言われて、24時間寝続けたんですけど、起きたら次の日にめちゃくちゃ罪悪感が湧いてきちゃって。
すごく共感します。
分野は違いますが僕も同じような状況で、定期的に廃人化していた時期がありました(笑)
やりたいだけやれる分、休むのにも勇気がいるし自己管理が難しくなるというか。
5日間働いて週末2日間で、、みたいな切り替えのサイクルがないのも難しいですよね。
そうなんです。だから今はオフの過ごし方を模索中です。
たまに2ヶ月に1回くらい友達と遊ぶんですけど、そういう時は朝まとめてガーッて練習して、睡眠不足でもいいから早起きしてノルマをこなして。
そこから夜、ずっと遊んでるとか、公園を散歩してるとか。それが唯一のオフかもしれないです。
オンの日はどうですか?
ライブや依頼がない日は、起きてすぐピアノに向かって10時間とか練習して、頭が回らなくなってきたらちょっと外に出て散歩して……みたいな。
練習自体は正直「楽しい4割、苦しい6割」くらいですね。
泣きながらやる時もありますし、チョコレートがないとやれないですし。
でも、たまにライブの曲をイメージトレーニングして「楽しみだな」ってなったり、好きなテイクをトランスクライブして「このフレーズ、ブルージーでいいな」って思えたりすると、その一瞬で苦しさが浄化される。
そのサイクルで生きています。
裏では色々な葛藤があるんですね。。
想像以上に、外から見えてる華やかな姿との乖離がありそうだなと感じました。
理想の生活
そんなストイックな日々の中で、思い描く「理想の生活」ってありますか?
多分もともと夜型人間なんですけど、今は起きるのが昼の13時くらいで、朝の7時くらいまで練習するっていうのが常で。
そうすると、どこか行きたいなってなった時にだいたいお店が閉まってるんですよ(笑)
だから理想は、ちゃんと朝という時間に起きて散歩をして、1日の頭をスタートさせてから練習に入って、夜は読書をして……
という、人間として普通のサイクルの中に練習を組み込んでいくことですね。
あと、音楽のインスピレーションって音楽から湧いてくることもあるんですけど、散歩してたり、すっごい綺麗な景色を見た時に受け取るものも大きくて。
音楽以外の感動経験を常に感じられる生活、心に余裕を持てる生活をしたいです。
心と体の健やかさは全部の基盤ですね。
なにをしていても「人間らしい生活」って大事ですよね。
そうなんです。やっぱり夜型だから合ってるんじゃないかとか思ったりするんですけど、そうでもない。
人間である以上、朝は朝、夜は夜だなって。
辛かったこと
少し踏み込んだ質問になりますが、今までで一番辛かったことは何ですか?
レベルが1と10とあって、レベル1は「腱鞘炎」です。
半年くらい前、練習時間を8時間、10時間に増やしたんです。
そうしたら腕が耐えきれなくて、ピキッて痛くなってしまって。
でもライブがあるから練習しなきゃいけない。
このまま痛みが癖になって弾けなくなったらどうしようという不安を抱えながら練習していました。
幸い、師匠に紹介してもらった病院で治療を受けたらみるみる治って。「体が資本だな」と痛感しました。
そんなことがあって、よくその病院を知人に紹介したりもしています。
ものすごい練習時間ですね。。
腱鞘炎が治ってからは、弾き方を変えたんですか?
自然と変わっていきましたね。
以前はクラシック特有の「手のひらに空気の球が入っているような」アーチ状のフォームだったんですけど、今はもっとベタッとした、打楽器的な弾き方になりました。
ジャズピアニストのセロニアス・モンクって知ってますか?
彼は指にゴツゴツした指輪をはめて演奏するんですけど、あれって「指が回りすぎないようにして、独特の間を作るため」らしいんですよ。
セロニアス・モンクというと
「’Round Midnight」は僕も大好きな曲です。
指輪にそんな役割があるんですね!
そうなんです。
私も最近、指が太くなったというか、ジャズ仕様の手になってきて。
クラシックの頃の綺麗な手ではないですけど、「自由になった手」という感じがして嬉しいですね。
なるほど……。では、レベル10は..?
これは現在進行形でもあるんですけど……小学校から中学校まで、少し学校の人間関係が拗れたことがあったりして。
特に中学1年生の時は、周囲との関係の中で、容姿について心ない言葉を向けられることがありました。
そのいじりが、私の容姿に対するものだったんです。
当時はかなり細身だったんですけど、体型について気になる言葉を向けられることがあって。
それがきっかけで「もっと痩せなきゃ」と思い込むようになり、ダイエットが行き過ぎて、結果的に拒食症になりました。
それは過酷ですね……。
どんどん体重が落ちて、もう小枝みたいになっちゃって。
ドクターストップがかかって学校にも行けなくなりました。
栄養が足りなくて脳が萎縮してしまって、それはもう戻らないんです。
言ってしまえば、実は毎日を過ごすこと自体が結構ハードモードなんです。
ただ、もしあの時辛い思いをしていなかったら、人の痛みにここまで敏感になれなかったかもしれない。
今は、周りに似たような悩みを抱えている人がいた時に、お互いに支え合えたり、音楽の仕事をもらえたりしています。
「結果的によかったのかな」とまでは言えないですけど、人の痛みがわかる人間になれたことは、今の自分の音楽につながっていると思います。
壮絶な経験を、ポジティブな力、優しさに変換できているのが本当にすごいです。
立ち直れなかったり、復讐心が芽生えてもおかしくない。
そんな中で人に寄り添う力に変えることができているのは、彩音さんの強さだと思います。
最近の嬉しい出来事
では逆に、最近あった嬉しい出来事はありますか?
渋谷にある老舗ライブハウスがあるんですけど、そこで先日リーダーライブをさせていただいたことです。
そこのママが、とても芯の通った方で、音に対して妥協のないタイプなんです。
だからかなり緊張していたんですけど、いざ本番になったら、ママが最前列で2時間ずっと聴いてくれたんです。
終わった後に「あなた、こんなに弾けると思ってなかった」って言ってくださって、 「また一時帰国した時にやりなさい」と続けてくださいました。
そのライブに向けて、日々の生活を捨ててめちゃくちゃ練習したので、それが報われたのが嬉しかったですね。
そのライブを経て、周りからも「音が変わったね」「ジャズになったね」って言われるようになって。
自分でも、人前で弾くことに少し余裕を持てるようになりました。
すごくいい話。。努力の賜物ですね!普段厳しい人だからこそ、心の底から言ってくれたんだって自信にもなりますね。
アーティストならではの悩みや不安
アーティストとして生きていく上での、特有の悩みや不安はありますか?
即興演奏(アドリブ)って、その時の感情がとても乗るんです。
だから生活で何か問題が起きたり、悲しいことがあると、演奏に出てしまう。
鼻歌って悲しい時に歌わないじゃないですか?
それと同じで、心が元気じゃないといいアドリブが出てこないんです。
自分のメンタルヘルスと演奏のクオリティが直結してしまう恐怖は常にありますね。
あと、やっぱり周りと比べてしまうこと。
「プロ目指すなら一生辛いからね」って上の人たちみんな言うんですけど、茨の道をずっと進むのか、どこかで自分の幸せを優先するのか、その葛藤はあります。
精神状態が演奏に直結してしまうというのは、逃げ場がない恐怖ですよね。
以前、家を出るのも這いつくばるような精神状態の時にライブが重なってしまったことがあって。
「もう無理だ、行けない」って泣きながら、同じ悩みを持つ友人に電話したんです。
直前までそんな状態だったんですか……。
そうなんです。
そしたら彼女が、「今からは治せないから、一旦『演じろ』」って言ったんです。
「ピエロになって、エンターテイナーのスイッチを入れろ。終わった後に倒れてもいいから、今はとりあえずスイッチを入れなさい」って。
その時間だけでも元気な自分でいるためにピエロになれ、と。
その言葉でハッとして。会場のドアを開ける手前で、バチン!と「スイッチON」にしたんです。
さっきまで泣いてたのに、ドアを開けた瞬間「こんにちはー!」って満面の笑みで入っていって(笑)
周りからは少し「顔色やばくない?」とか言われましたけど、演奏もお客さんとの会話も、ピエロになりきってやり遂げました。
なれと言われてなれるのもすごいですよ(笑)
まさに身を削って「演じて」いる。
そのスイッチのオンオフで、なんとかギリギリの均衡を保っているんですね。
アーティストならではの楽しみや希望
アーティストならではの喜びはどうでしょう?
たまに自分のライブで涙してくれる方がいるんです。
以前、「ダニー・ボーイ」という曲を弾いた時に、最前列のお客さんが泣いていて、後から「心が洗われました」ってメッセージをくださったり。
あと、精神的にしんどい時期だった共演者の方が私のライブを見て、「楽しそうに弾いている姿を見て、音楽の可能性に気づけた」って泣いてくれたこともあって。
それはとてつもなく嬉しいですね!
ブランドは性質上、直接的にライブのような大きな感動を作るのは難しいと思っている部分があります。
人の心をダイレクトに動かすってすごく羨ましいし、尊敬します。
自分の音楽が、言葉ではなく「音」として誰かの心に作用して、何かを思い出させたり、感動させられたりする。
どう作用するかはわからないけれど、自分の感性が誰かの心を動かせるというのは、アーティストならではの希望だし、楽しさだと思います。
彩音さんの曲はすごくキラキラしていて美しくて、明るいイメージがあるんですが、先ほど伺った内面の苦しさとはギャップがあるように感じました。
作曲はどういうタイミングでするんですか?
実は、すごくハイテンションな時に書くことが多いんです。
そういう時って、観葉植物の葉っぱに太陽が反射しただけで 「わあ、綺麗!」って感動できたり、アイデアが溢れてくるので。
その「キラキラした世界」を曲にして残しておくことで、気持ちが沈みがちな時期にそれを弾いた時、その輝きを思い出せるようにしているというか。
なるほど。抱えているドス黒い感情を曲にすることはないんですか?
ないですね。
ドス黒い感情は、どういう音にすればいいか分からないし、何より大好きなバンドメンバーと、その苦しい感情を共有したくないんです。
もしライブで、私が「今日は辛いです」っていう音を出して、メンバーや聴いてくれる人を巻き込みたくない。
みんなには「楽しかったね」って思って帰ってほしいから、あえて「憧れの平和な世界」や「キラキラした光」を曲にしているんだと思います。
黒い感情がリアルなものだからこそ
ご自身の内側をそのまま出すというより、一歩先の「こうありたい世界」を提示しているんですね。
作曲の仕方にすごく彩音さんの優しさを感じました。
影響を受けたアーティスト
音楽人生で影響を受けたアーティストはいますか?
1人は、高校3年生の時に出会ったピアノの先生です。
その先生、とてもか細い女性なんですけど、ピアノの前に座ると化け物みたいな音を出すんです。
国立音大の先生の中でも一番大きい音がホールの奥まで届くと言われていて。
小柄なのに、一番大きな音を。
パワーがあれば大きな音が鳴るというわけでもないんですね。
そうなんです。
その先生の打鍵って、脱力した力で、正確なタイミングとスピードで叩く。
遠心力の使い方まで全部計算されていて、か弱い腕でも脱力してポンとホームランを打つみたいに音を出す人でした。
「体格が小さくても、努力と研究で人を感動させる音は出せるんだ」と、当時拒食症で痩せていた私に希望をくれた先生です。
極致ですね。とっても奥深い。
2人目は、Emmet Cohen(エメット・コーエン)というピアニストです。
彼はクラシックから、ニューオーリンズ、現代のジャズまで全時代のスタイルを網羅していて、まるで「辞書」みたいに引き出しがあるんです。
その上で、あえて音を選んで弾いている。
生で演奏を聴いたときに、「100人のピアニストが持っている技術を、たった一人に凝縮している」みたいな衝撃を受けました。
人格も素晴らしくて、あんなに凄いのにお茶目で笑顔を絶やさない。私の理想のピアニストです。
例えると「五角形のパラメータが全部MAXにあって、その中から選んでMAX以上で出力できる人」って感じですね。すごい。。
理想のアーティスト像
彩音さんがなりたい理想のアーティスト像についてお聞きしたいです。例えば多くの人に受け入れられるメジャーな存在か、わかる人にはわかるようなコアな存在か。どういうスタンスでいたいですか?
これ、すごく考える機会があったんです。
この間初めてCMのレコーディング仕事をしたんですが、自分の周りのジャズミュージシャンの中には、商業的な仕事に対して距離を感じる人もいたんです。
でも実際にやってみたら、名前は出なくても自分の音が世界のどこかで流れていることにすごくワクワクして。
私は、ジャズだけに特化するんじゃなくて、クラシックもポップスもファンクも、いろんなジャンルができる「便利屋さんのピアニスト」になりたいし、その一つひとつが洗練されていてほしい。 クラシックを土台にしながら、ジャンルの枠を越えて自在に活動できるピアニスト像に憧れています。
人生一回きりだし、いろんな音楽を知らずに死ぬのは嫌なので(笑) 全部のリスペクトを持ってやりたいですね。
アイデンティティ/音の美しさ
彩音さんが大切にしている信念はありますか?
「自分のアイデンティティ、唯一無二の持ち味を探求し続けて、それを守ることをやめない」ことです。
いろんな影響を受けて変わっていくことはいいことだと思うんですけど、根底にある「自分とはなんぞや」という部分はブラしたくない。
具体的に言うと、「音の美しさ」です。
これはちょっと不思議な話なんですけど、私、生まれた時から音が色で見えたり、ドミソが聴こえたりしていて。
クラシックの時も、他の技術がボロボロでも「彩音ちゃんは音が綺麗だね」って言われ続けてきたんです。
どんな依頼が来ても、どんなジャンルを弾いても、「音が綺麗」という自分の持ち味だけは絶対に曲げたくない。
そこは死ぬまで守り続けたいと思っています。
音の美しさか。。
彩音さんのピアノが好きな理由が一つわかった気がします。
すごい、共感覚のようなものをお持ちなんですね。
そうですね。文字にも色があって。
小さい頃、銭湯でお母さんと「"あ"は何色?」みたいなクイズを延々としていた記憶があります(笑)。
「い」と思い浮かべたら黄色い文字が見えたり。
そういう、自分だけの感覚はずっと守っていきたいです。
お守りとしてのアクセサリー
ここからは少しジュエリーも絡めたお話を。「Whole note(Silver)」のピアスをライブの時に着けてくださっていて、本当に嬉しいです(泣)演奏の時には他にもアクセサリーを着用しますか?
ピアスは欠かせないですね。
元々は6個くらい開いてて、耳に何かを飾るのが好きなんです。高校の時は親友にもらったピアスを本番で毎回つけて、「この子がいるから大丈夫」ってお守り代わりにしていました。
ネックレスも「お守り」としてつけることが多いです。
ブレスレットは鍵盤に当たっちゃうのでつけられないし、指輪もオクターブを弾く時に邪魔になることがあるので、つける指は選びますけど、基本的には何かしら身につけていますね。
「本番」という緊張する場面で、アクセサリーが「お守り」や「スイッチ」になると心強いですね。
ピアニストにとっての音楽記号
Em7(エミナ)というブランド名は、音楽コードの「E minor 7th(イーマイナーセブンス)」からきていて、音楽モチーフのアイテムが多くあります。
彩音さんから見て気になるものはありましたか?
へ音記号のハートのリング(F Heart)、あれインパクトがあってすごい好きです!
私たちピアニストにとってへ音記号って、演奏する上では当たり前に使っているけれど、デザインとして前に出てくることはあまり多くない分、分かるとぐっと愛着が湧く記号というか、ちょっとマニアックで可愛い存在なんですよ(笑)。
あと、四分休符のリング(Quarter rest)。あれもさりげなくて好きです。
そんな風に見ていただけて嬉しいです。
実は私、昨日見ていて思ったんですけど……私たちにとって音楽記号って、なんて言うんだろう、「充電プラグ」みたいなものなんですよ(笑)
充電プラグ?(笑)
そう(笑)。一般の人にとっての充電ケーブルと一緒で、そこにあって当たり前で、「あ、充電しなきゃ」くらいの感覚で見てる日常のツールなんです。 でも、Em7のアクセサリーを見た時に、その「いつもの充電プラグ」的なものが、キラキラして、いつもと違う形でそこにあって。「えっ、こんなに綺麗だったの?」って、すごいびっくりしたんです。
なるほど、日常すぎて見えなくなってるんですね。
僕も音楽は大好きですが、趣味として楽しい範囲だけでやっているからこそ、外側から形として見れているのかもしれません。
内側にいる人からは見えない部分が、外側にいる僕には見えていて、そのギャップに感動の可能性があるのかもしれないですね。
それはあると思います。
私たちにある「音楽はこうあるべき」っていう固定概念を、別の方向から形にしてもらっている感じがして。
いつも見ているものがアクセサリーになることで、「あ、私ピアニストなんだ」って改めて自覚できたりもするし、そういう新しい視点をもらえるのが面白いですね。
ジュエリーのための曲
彩音さんの視点で「こんなアイテムや企画があったらいいな」というアイデアはありますか?
Em7がやっている「音楽の要素からジュエリーを作る」の逆をやってみたいです。「このジュエリーのための曲を作る」みたいな。
例えば、「フラット(♭)」のモチーフのジュエリーがあったら、フラットがたくさんつく調の曲を作るとか、そのデザインからイメージをもらって作曲する企画ができたら面白そうだなと。
アイテムで言うと、舞台の照明を反射することに特化したピアスとかあったら嬉しいですね。演奏中って結構揺れるので、客席から見た時にキラキラ反射して見えるような。
あとは、「五線譜」が耳から5本のチェーンで垂れ下がっていて、揺れるたびに形が変わるようなデザインとか。
たくさんありがとうございます。すごくおもしろそう!!ぜひお願いしたいです!
ライブ映えに特化したアイテムも考えてみますね。
読書の時間
ブランド名の「Em7(エミナ)」がなぜ「E minor 7thイーマイナーセブンス)」からなのかというと
ジャズのスタンダードナンバーに『My Favorite Things(私のお気に入り)』という有名な曲がありますよね。
あの曲の冒頭のコード進行がEm7から始まるからなんです。
だからこのブランドには、「誰かの人生の“お気に入り(My Favorite Things)”になるような、素敵なきっかけを作りたい」というテーマも込めていて。
それにちなんでお聞きしたいんですが、彩音さんの日常の中で、これぞ「私のお気に入り」と言えるような時間や、大切にしているひとときはありますか?
音楽の時間以外で言うと、読書をしている時ですね。 特にミステリー小説が大好きで、雨穴(うけつ)さんという作家さんの本をよく読みます。
私、漫画だと情報量が多すぎて疲れちゃうんですけど、活字だと主人公の顔が見えない分、自分の頭の中で世界を構築できるので没入できるんです。
本を読んでいる間は、現実の辛いことやネガティブな感情を忘れられるので、すごく救われている居場所ですね。
最近のお気に入りの音楽
では締めくくりに、最近よく聴いている音楽を教えてください。
一番聴いているのは、Roy Hargrove(ロイ・ハーグローブ)の『Top of My Head』や『Soulful』です。技巧的というよりは、旋律とコードの選び方が本当に好きで。
あとは、朝起きられた時は Maroon 5 の『Sunday Morning』を聴きます。「よし、ちょっと歩いてみようかな」って思わせてくれる、朝にぴったりの曲です。
鞍智彩音さん、本当にありがとうございました!
今後のご活動も応援しております♪
編集後記
明るく煌びやかな印象も受ける音色の裏には、「毎日を過ごすこと自体がハードモード」と語るほどの苦悩や葛藤がありました。
そんな彼女が死ぬまで守りたいというアイデンティティは「音の美しさ」。
先日、彩音さんのライブに足を運び、改めてミュージシャンという存在の凄みに圧倒されました。
どんな分野でも、ほんの少し足を踏み入れてみるだけで、そこに腰を据えて生きる人の努力がいかに途方もないものか、想像できるようになります。
Em7をローンチするより前の20代前半の頃、半ば焦燥感に駆られるように様々なことに触れてきました。趣味として今も続けているピアノもその一つです。
それらは決して無駄ではなく、こうして誰かの人生の深さに触れ、心から感動し、敬意を抱くための「ものさし」になってくれているのだと感じます。
いくつになっても新しい世界に触れることは、自分の人生だけでなく、他人の人生をも豊かに彩ってくれるはずです。
このアーカイブが、彼女にとっても、読んでくださった貴方にとっても、新しい「お気に入り(My Favorite Things)」の始まりとなりますように。
そしてまた、何かに挑戦する誰かの背中を押すものになれば幸いです。
Em7 Director / Sakyo Kobayashi
